
昨今、「為替」や「原材料の値上がり」などが原因で、工場原価が上昇しています。
「工場や原産地を変更することで価格を下げたい」という声も、方々から聞こえてくるようになりました。
靴下の工場は、ローエンドからハイエンド向けまで、無数にあります。数字だけで価格を判断すると、自社の品質に影響が出ます。
利益は確保できたとしても、靴下の売れ行きが伸びない。あるいは品質トラブルが発生する。そうなってしまっては、本末転倒です。
本記事では、靴下の価格を検討する方法について紹介してまいります。
価格は分解して考える
靴下の価格を検討する際、私たちは次のような要素を一つずつ分解して整理します。
- 発注数量
- 糸の種類
- 編み方
- 加工方法
- パッケージ
- 工場との関係性・将来性
これらを検討することで、理論的に価格が下がるポイントを探すことができます。
靴下の価格を下げる方法
パーツごとに分解した要素を検証することで、削ることができる部分があるかを探っていきます。
発注数量
数量によって価格が変動します。生産数量が多くなるほど価格が下がります。
糸の種類
糸の種類を変更することで価格が変わります。1本の太い糸を使うか、数本束ねた糸を使うかで、価格が変動します。
一般的に天然繊維のコットンより、化学繊維のポリエステルの方が価格が低めになります。
数本を束ねた糸よりも1本の太い糸を使う方が価格は下がります。
編み方
靴下の編目の数や、長さによって価格が変動します。靴下の長さを短くすると価格が下がります。
加工方法
靴下のつま先を縫製、刺繍、滑り止めなどの加工方法によって価格が変動します。通常刺繍や滑り止めの加工は靴下工場が外部の専門工場へ依頼します。靴下の価格に加工費が追加されるため、価格が上がります。
例えば、元々刺繍を予定していたデザインを拡大し、編み込みに変更することができれば刺繍の加工費の分だけ価格が下がります。
パッケージ
靴下のパッケージ方法によって価格が変動します。四角いボール紙で靴下を固定してフックで吊り下げて梱包する「紙タグ」や「帯」を巻く方法などがあります。
「紙タグ」や「帯」はロットが少ないと割高になるため、1個袋にシールを貼る。売り場のフックをかけることができる穴つきの1個袋にシールを貼る。などに変更すると価格が下がります。
工場との関係性・将来性
工場との関係性や、自社の将来性も重要な要素になります。
自社がどのような考え方を持ち、どのように発展していきたいのか理解してもらうことで、「工場にとってメリットがある」と判断されれば、協力を得られることがあります。
相見積もりは「同じ条件」で比較する
相見積もりを取る際は、価格だけで比較するのではなく、条件を揃えて比較することが重要です。
価格を構成する要素を整理した上で、同じ条件で見積もりを取らなければ、正確な比較はできません。
見えにくくなりやすいポイントをいくつか挙げます。
糸・編み方による違い
糸の規格は工場によって異なります。
細い糸を2本束ねている場合もあれば、太い糸を1本で編んでいる場合もあり、仕様によって靴下の厚みは変わります。
また、編み目の数(ゲージ)も重要です。同じ靴下でも編み目の数が異なれば、密度が変わります。
これらは材質と合わせて、靴下の質感を左右する部分です。比較する際は、重量を量るのが分かりやすい方法です。
検品・検針工程の違い
見えにくい部分として、検品と検針の工程があります。
業者によって工程は異なります。
弊社の中国生産を例にすると、
- 工場検品・検針
- 第三者検品・検針
- 日本国内検針(金属探知機)
という流れになっています。第三者検品では、1足ずつ目視で検品し、合格品をパッケージします。
こうした検品方法の違いによってもコストは変わります。
サンプル製作と修正対応
サンプル製作の考え方も重要な要素です。
- 何回まで修正が可能か
- 修正に追加費用がかかるのか
こうした条件を事前に確認しておく必要があります。
弊社の場合は、バーチャルサンプルと実物サンプルの製作を単価に含めています。
監修が必要なキャラクター案件を多く扱っているため、修正対応も含めた設計にしています。
これを明確にしておかないと、
- 修正のたびに追加費用が発生する
- 修正対応に慣れていない
- コスト重視の工場では修正対応の余力がない
といった問題が起こることがあります。
工場を変更したことで、開発力が低下することにならないように、事前の確認が必須になります。
何にこだわって、何を犠牲にするか具体的に検討する
お客様より「品質を落としてでも価格は下げたい」とご相談があった場合、私たちがおすすめする優先順位は下記の通りです。
A、「履き心地とデザインは落とさずに、パッケージを極力簡略化して価格のバランスをとる」
B、「長さを短くする」
C、「編み目の数を減らす」
D、「材質を変更する」
「A」「B」まででしたら、履き心地を損なうことなくコストダウンが可能です。
私たちの考えかたとして「C」「D」はお勧めしていません。
靴下の履き心地は外から見えないため、軽視されがちな部分です。
カフェでかわいい猫をデザインしたラテアートが入ったラテを頼んで、いざ口にしてみると生ぬるかったら、次回同じカフェに行こうと思うでしょうか。
靴下も同じです。着用して違和感があれば、リピート率は確実に下がります。
靴下は単価が高い商品ではありません。だからこそ、一度気に入っていただくことでリピートにつながる商材です。
目先のコストを優先して履き心地を犠牲にすることは、長期的にはおすすめしていません。
岩村 耕平
合同会社ブリングハピネス代表
靴下マイスター
東京都練馬区生まれ。
中華圏と携わって34年目。中華圏でのものづくりの仕事をして24年目。
業務のコミュニケーションはすべて中国語で行う中国語の達人。
大手ぬいぐるみメーカーで通訳、貿易事務、生産管理を経験ののち、靴下OEM製造の魅力に取りつかれ独立。
2014年、合同会社ブリングハピネスを立ち上げる。

