靴下の開発が途中で頓挫してしまう原因の一つに、優先順位の判断ミスがあります。
その背景にあるのが、「Aが良くなれば、Bが犠牲になる」という関係です。
この現象は、株式用語で「トレードオフ」と呼ばれます。
どちらかを選べば、どちらかを失う。靴下の開発に限らず、多くの意思決定は、このトレードオフの関係の中で成り立っています。
オイルヒーターの話
例えば私は、暖房の中ではオイルヒーターが一番好きです。 温まるまで時間はかかりますが、ほんのり自然な暖かさが続きます。
温風で喉が痛くなることもありません。
ただし電気代が高く、使いすぎると妻に怒られるのが唯一のデメリットです。
これもひとつのトレードオフの例です。
靴下を開発するときにトレードオフを意識する
靴下を開発する際も、トレードオフを意識する必要があります。
私たちはデザイン系靴下の製作を多く手がけているため、ここではデザイン系靴下で起こりやすいケースを例に挙げます。
靴下の開発中に、工場から「デザインの再現が難しい」と伝えられるケースがあります。
その際にトレードオフを理解していると、次のように選択肢とリスクを整理して判断することができます。
価格を上げれば製造ができるのか
仕様を見直すことでデザインの再現性が上がる可能性はありますが、その分、製造コストは上昇します。
対応できる工場を探す
設備や技術力が原因の場合、対応可能な工場へ切り替える選択肢もあります。
ただし、工場探しには時間がかかり、見つかったとしても価格が上がる可能性があります。
妥協または開発を中止する
デザインを変更する場合、特にキャラクターものだとデザインから監修する必要があり時間がかかります。一方で開発を中止すると機会損失につながります。
どの選択がベストかは、価格・納期・完成度のバランスを見ながら判断する必要があります。
重要なのは、どれかを選べば、どれかを失う可能性があるというトレードオフを前提に考えることです。
ブレーキとアクセルを、同時に踏むことはできません。
感情で迫ることのリスク
注意したいのが、感情的に工場へ無理を求めてしまうケースです。
工場の担当者がまじめであればあるほど、なんとかしようとします。
結果として解決できればよいのですが、そうならなかった場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。
- 何回サンプルを作っても再現ができず、時間だけが過ぎてしまう。
- 無理を重ねた結果、生産時に品質不良が発生し、金銭的なロスが発生する。
- 商品化できたとしても履き心地がきつく、結果的にリピート率が下がる。
まとめ
靴下づくりに限らず、ものづくりには必ずトレードオフがあります。
私自身も、これまで多くの苦い経験を重ねてきました。
価格、デザイン、履き心地、納期。すべてを同時に満たすことは難しく、どこかで優先順位を決める必要があります。
大切なのは、何を優先し、どこで折り合いをつけるのかを整理したうえで判断することです。
トレードオフを理解した上で進めることで、無理のない開発につながり、結果として長く選ばれる靴下づくりが可能になると考えています。
個々の案件ごとに何を優先するかは異なりますが、その判断を行う際の考え方の軸については、下記ページにまとめています。
私たちの製造に対する考え方
https://www.bringhappiness.jp/policy/
