
「Aが良くなればBが犠牲になる」現象は、株式用語で「トレードオフ」と呼ばれます。
どちらかを選べば、どちらかを失う。多くの選択はこの関係の中でなりたっています。
オイルヒーターの話
例えば私は、暖房の中ではオイルヒーターが一番好きです。 温まるまで時間はかかりますが、ほんのり自然な暖かさが続きます。
温風で喉が痛くなることもありません。
ただし電気代が高く、使いすぎると妻に怒られるのが唯一のデメリットです。
これもひとつのトレードオフの例です。
靴下づくりにもトレードオフがある
靴下を開発する際も、トレードオフを意識する必要があります。
私たちはデザイン系靴下の製作を最も得意としておりますので、デザイン系靴下にありがちな事例を紹介してまいります。
柄が細かくなると履き心地がきつくなる
「靴下を裏返すと天使が悪魔に変わるっ」
SNSなどで時々画像と合わせてUPされるキャラクター靴下の裏側を撮影した画像を見かけます。
編み込みの靴下の裏側には糸が渡ります。こちら「天使が悪魔に変わる」だけではなく靴下がきつくなります。
場合によっては、外観は整っているもの実際には「履けない靴下」が完成してしまうこともあります。
キャラクターの監修は通ってなんとか発売にこぎつけた。だけど履き心地が悪い(履けない)とならないように、
「デザインと着用の両立」を念頭に入れて開発を行う必要があります。
開発時にトレードオフを意識する
キャラクター靴下の開発中に、工場から「デザインの再現が難しい」と伝えられることがあります。
その際にトレードオフを意識していると、感情に流されずに冷静な判断がしやすくなります。
- 価格を上げればできるのか(デザインの再現性は上がるが、利益は下がる)
- 妥協または開発を中止する(デザインを変更する場合、特にキャラクターものだとデザインから監修する必要があり時間がかかる)
- 対応ができる工場を探す(工場を探す時間がかかる。見つからない可能性や価格上昇のリスクもある)
のように、方針とリスクを天秤にかけながら判断することができます。
感情で迫ることのリスク
一方で注意したいのが、感情的に工場へ無理を求めてしまうケースです。
工場の担当者がまじめであればあるほど、なんとかしようとします。
結果として解決できればよいのですが、そうならなかった場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。
- 何回サンプルを作っても再現ができず、時間だけが過ぎてしまう。
- 無理を重ねた結果、生産時に品質不良が発生し、金銭的なロスが発生する。
- 商品化できたとしても履き心地がきつく、結果的にリピート率が下がる。
まとめ
靴下づくりに限らず、ものづくりには必ずトレードオフがあります。
私自身もこれまで多くの苦い経験を重ねてきました。
価格、デザイン、履き心地、納期。すべてを同時に満たすことは難しく、どこかで選択をする必要があります。
大切なのは、何を優先し、どこで折り合いをつけるのか。
トレードオフを理解したうえで判断することで、無理のない開発や、長く選ばれる商品づくりにつながると考えています。
