
デザイン性の高い靴下を企画し製造する場合、見えない部分にはなりますが、「デザイン」と「履き心地」の両立が重要になってきます。
- 見た目は良いが、履くと違和感がある
- 初回は売れたが、リピートにつながらない
こうした問題は、設計の積み重ねで改善できる可能性があります。
本記事では、デザイン物の靴下をつくるとき、履き心地はどのように設計されているのか。
現場での経験をもとに、考え方を整理してみたいと思います。
裏側に伝う糸をどう設計するか
「XXのキャラクター靴下を裏返すと天使が鬼にかわる」
「キャラクター靴下の裏側がもしゃもしゃ。メーカーはなんできれいに切断しないんだ」
最近SNSなどで上記のようなつぶやきを目にすることがあります。
キャラクター靴下において、裏側に糸が伝うこと自体は避けることはできません。
糸を短く切りすぎると、今後は表側から糸が飛び出してきてしまいます。
そのため製造時には、糸が伝う問題を前提としながらも、せめてループに指がひっかからないよう可能な範囲でループを切断する設定を行います。
ただしデザインが細かくなればなるほど、裏側に伝う糸の本数は増え、編機の性能上、切断できないケースが多くなります。
下記は靴下の全面にデザインが入った編み込み靴下です。色数が少なくシンプルなデザインのため、ループの中央を切断することができました。
その結果、指にひっかかりにくく、かつ靴下がきつくなりすぎない状態に改善されています。

キャラクターの再現性と履き心地の折り合いをつけるために
デザインを簡略化すれば裏側の糸は減りますが、簡易化しすぎするとキャラクターそのものが成立しないケースもあります。
キャラクターものは版権元の監修に通らないと発売ができませんので、メーカーにとっても悩ましいところです。
現実問題キャラクター靴下はデザインを複雑にしすぎると裏側に伝う糸が増えるだけではなく、靴下自体がきつくなります。
この「裏糸」の問題に関して、工場や地域によって向き合い方に差が出やすい部分です。
私の経験では、台湾の工場は裏糸が出ることを前提に設計する意識が比較的強く、可能な範囲でループを切断し、切断しきれない部分は伸縮性で補う、という考え方が共有されています。
一方、中国では、この裏糸を履き心地の問題として強く意識しないまま進むケースも見られます。
特にデザインが細かくなるほど、糸の本数が増え、切断しきれず、結果として引っかかりやすくなる傾向があります。
裏糸については、設計段階でどれだけ意識しているかが、履き心地に直結しやすいポイントだと考えています。
縫製ライン
靴下はつま先が縫われていない状態で編みたてられます。編みたてが完成したらつま先をミシンで縫製します。

通常キャラクター靴下はロッソという方法で縫製します。上記画像の左側が画像です。
縫製ラインに段差があるのがわかります。
多くの靴下はラインから下に絵柄が入らないため、縫い目が足の甲にあたる感じになります。
なお、縫製ラインについては、台湾でも中国でも、縫い目をなくす加工をすることが可能です。
糸の質と柔らかさ
もう一つ、履き心地に大きく影響するのが、使用する糸の質と肌ざわりです。
台湾では、標準仕様の段階でインド綿など比較的等級の高い糸が使われることが多く、特別な指定をしなくてもやわらかさや肌ざわりが一定水準にあります。
また下糸につかわれるゴムについても、伸縮性に優れた素材が使われています。伸縮性とは文字通り「伸びて、縮む」性能のことを言います。
靴下の伸縮性と生地の柔らかさによって、柄の細かさによって生じたきつさが緩和され、履き心地が改善されます。
着用時に横方向へしっかり広げられる靴下であれば、裏側に伝う糸(ループ)を目で確認しながら、無理なく足を通すことができます。
一方で、生地が固く伸縮性に乏しい靴下の場合、横に十分広げることができません。
足を無理に押し込むようにして履かせざるを得ないケースも少なくありません。
そうなると、ループの位置を確認する余裕がなくなり、結果として糸が引っかかる確率が高くなります。
台湾で製造される靴下は、柄が複雑な場合でも横方向への伸びが確保されているため、ループを確かめながら着用させることができます。
特にお子様に靴下を履かせる親御さんにとって、安心して使いやすい設計だと感じています。
中国では、何も指定をしない場合、やや硬めのコットンになることもあります。ただし、綿コーマ糸などを指定することで、履き心地を改善することは可能です。
その分、コストは上がりますが、選択肢の幅が広いという点では、中国の強みとも言えるかもしれません。
履き心地の設計とは、どこで折り合いをつけるかを決めること
デザイン物の靴下では、
- 裏糸をどこまで許容するのか
- 縫製ラインをどこに持ってくるのか
- 糸の柔らかさをどこまで求めるのか
すべてを同時に完璧に満たすことはできません。
だからこそ、どの要素を優先し、どこで折り合いをつけるか。その判断の積み重ねが、履き心地を形づくります。
中国でも、設計や指定を工夫することで履き心地を改善することは可能です。
ただし、デザイン性と履き心地の両立を前提に、長く売れる定番の靴下をつくりたいのであれば、最初からその設計思想が共有されている台湾の方が、結果として近道になるケースが多くなります。
私たちは、そうした理由から台湾での製造を選んでいます。
