
本記事では、オリジナル靴下を小ロットで生産する際に、「なぜコストが上がるのか」「どこで妥協が生まれやすいのか」
そして「具体的なコストの違い」を、製造現場の視点から整理します。
製造用語で、1回の生産で製造する数量のことを「ロット」、生産対応が可能な最低限の数量のことを「小ロット」言います。
小ロットで靴下を製造する際のデメリットとは
ゼロから靴下のブランドを立ち上げられる場合、ブランド自体が成功するかどうか試してみないとわかりません。
少ない投資金額で、根気を持って、成功するまで小さなチャレンジを繰り返すのがベストです。
投資金額を減らすためには製造ロットを極力少なくしたいところですが、下記のようなデメリットが生じます。
製造原価が上がる理由
靴下を小ロットで製造すると、製造原価はどうしても高くなります。
その大きな理由の一つが、編機のセッティング工程です。
靴下製造では、糸を編機にセットするための準備工程があり、この作業には3時間〜半日程度かかります。
このセッティングの時間は、生産数量が多くても少なくても変わりません。
一方、編機を実際に回して靴下を製造する時間は、数量が少ないほど短くなります。
靴下の編み立てが完了したらすぐに、次の製品をセットしなければ編機が遊んでしまいます。
セッティングを行っている間は編機を動かすことができません。
工場にとっては、生産設備が稼働し製品を生み出す時間こそが、お金を生み出すゴールデンタイムになります。
小ロットでの製造は編機を止める時間において「ロス」が発生するので、その分が原価に反映されます。
サンプル修正にコストがかかる
靴下のサンプルは、生産数量に関係なく、同じ工程を経て製作されます。
そのため、サンプル1回あたりの製作費をロット数で割ると、ロットが少ないほど1足あたりの単価が割高になります。
サンプル製作には、職人の時間や材料費といったコストがかかります。
小ロットの場合、工場によっては修正するたびにサンプル代が発生するケースも少なくありません。
修正のたびに費用がかかる状況では、どこかで「妥協の判断」を迫られてしまうかもしれません。
価格と品質のバランスが取りにくくなる
製造原価が高くなると、その分を販売価格に反映させる必要があります。
その結果、他ブランドとの比較で、「品質は同等なのに価格だけが高い」といった状態になることもあります。
生産数量が少ないことによるコスト増だけで価格が上がってしまうと、市場での比較において見劣りしてしまう可能性があります。。
靴下で食べていくために「経済ロット」の考え方とは
靴下は、比較的単価の低いアパレル商材の一つです。
しかしその一方で、毎日使われる消耗品であり、リピート率が高いという大きな特長があります。
靴下で継続的に事業を行うには、一定の数量を売り続ける前提で考えることが重要になります。
価格やサンプル製作に影響が出ない数量のことを「経済ロット」と言います。 工場によって数値が異なります。
「経済ロット」と「小ロット」の具体的な価格の違いとは
弊社台湾工場で製造する際のロットは、「300足〜」です。
たとえば、144Nのミドルゲージのスニーカー丈の靴下を例にすると、
100足 → 約500円/足 → 合計5万円(国産A社例)
300足 → 約250円/足 → 合計7万5,000円(弊社台湾工場例)
となります。
100足と300足では、総額の差は2万5,000円です。
この価格差は、台湾が安いという話ではなく、小ロット特有の生産効率によるコスト増が要因です。
また弊社では一定量のオーダーを台湾工場へ集約しているため、その関係性が価格にも反映されています。
経済ロットで作り込む
さらに、台湾で300足製造する場合のコストには、 バーチャルサンプルの製作と実物サンプルの製作も含まれています。
そのため、単に数量が増えるだけでなく、「修正を踏まえた作り込み」が可能になります。
靴下の商材が持つ、事業としての強み
小ロット生産そのものが悪いわけではありません。
市場が見えない段階では、小ロットから始めるのは合理的です。しかし小ロット生産は入口です。
靴下を事業として組み立てるのであれば、最終的に目指すべきなのは、リピートの継続受注です。
靴下は消耗品であるため、単価は低めですが、リピート生産が見込めます。
まずは小ロットで試して、経済ロットで回す。これが、靴下ビジネスを成功させる近道だと考えています。
靴下を小さくはじめるための作り方|靴下ブランド立ち上げ初期の考え方
岩村 耕平
合同会社ブリングハピネス代表
靴下マイスター
東京都練馬区生まれ。
中華圏と携わって34年目。中華圏でのものづくりの仕事をして24年目。
業務のコミュニケーションはすべて中国語で行う中国語の達人。
大手ぬいぐるみメーカーで通訳、貿易事務、生産管理を経験ののち、靴下OEM製造の魅力に取りつかれ独立。
2014年、合同会社ブリングハピネスを立ち上げる。

